2011年09月30日

パープルリボン2011in名古屋に行ってきました

パープルリボンと言われてなんのことかすぐ分かる人は少ないと思います。実はすい臓がんの啓発と撲滅を訴えるリボンなんです(ほかに女性への暴力撲滅運動でも使われていますが)。

このパープルリボンの名を冠したすい臓がんのイベントがあったので行ってきました。イベントというか、まあ市民講座のようなものですね。



Purple Ribbon

すい臓がんというと非常に厄介、深刻というイメージがあると思います。残念ながら、そのイメージは間違いではありません。ただ、その理由として「初期に自覚症状がなく、知らないうちに進行するから」と思っている人が多いのではないでしょうか。

すい臓がんに自覚症状がないのはそのとおりですが、これはすい臓がんに限ったことではなく、がんというのは自覚症状がないのが普通です。

ではなぜすい臓がんは厄介で深刻なのかというと、まずひとつはすい臓という臓器が非常に太い血管と一体のようになっているため、手術が難しいこと。かなり初期で運良く見つけないと、手術できません。

手術が出来なければ抗癌剤が頼みの綱ですが、すい臓がんに効く抗癌剤は非常に少なく、保険の範囲内で使えるのは3種類しかありません。

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さて、この日のイベントですが、すい臓がんの最新情報が盛り沢山でした。危険因子と予防、診断、外科療法、化学療法それぞれの最先端の状況が分かりやすく説明されました。

例えば診断ですが、初期のすい臓がんは非常に見つけにくいため、最新の診断方法としてEUSというものがあるそうです。これは胃カメラの先端にエコーのプローブを取り付けたようなもので、体の外側からではなく、胃の中のほうからエコー画像を撮れる。こんな方法があるとは知りませんでした。

ほかにもおどろくべき話がたくさんあり、膵臓がんの治療も進歩していると感じたのですが、しかし、すい臓がんの罹患数と死亡数はその差が9%しか無いそうです。つまり、100人がすい臓がんになったらそのうち91人は死亡してしまうということです。個のデータは2005年のものであり、5年生存率ではなくもっと長いスパンでの統計なので、厳しい数字が出やすいのだそうですが、それにしてもがん全般の半数以上が直るようになってきたと言われる中で、あまりに厳しい状況です。

ちなみに1980年辺りまでは罹患数と死亡数はほぼ同じ、つまりすい臓がんになったほぼ全員が亡くなるという状況だったそうで、それを思えば膵臓がんの治療も進歩はしているわけです。

なお、すい臓がんのリスク要因は喫煙と肥満だそうです。がん全般、というより病気全般のリスク要因とあまり変わりありません。塩分をたくさん摂ると胃がんになりやすい、というような、すい臓がん特有のリスク要因は無いようです(遺伝も疫学的に否定されているようです)。別の見方をするとすい臓がんは生活習慣病としての側面が非常に小さく、すい臓がんになるかどうかは単純に運の問題ということです。

逆にすい臓がんを予防する要因として、葉酸があるそうです。葉酸とはビタミンB9の別名で、その名の通り葉物野菜や、鶏レバーに多く含まれています。葉酸はすい臓がんに限らずがん全般を予防する効果があって、今注目されているようです。

ただ、サプリメントで葉酸を摂ると逆効果になるという研究結果があるそうで、食べ物からとることにこだわったほうがいいそうです。でもこれって、野菜をたくさん食べるっていう、ごく普通の健康法に帰結してしまうんですね。野菜中心の食事の有効性が、葉酸によって証明されつつある、といったほうがいいのかもしれません。

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疫学の専門家の講演の中で、喫煙によるリスクの説明がありました。それによると、一度でもタバコを吸うとすい臓がんになるリスクが上昇し、その後タバコをやめてもリスクは上昇したまま下がらないそうです。

ちなみに疫学で「一度でもタバコを吸った人」とは、一生の中で100本以上タバコを吸った人のことと考えていいようです。そして、肺がんはタバコを吸うとリスクが上がり、タバコをやめるとリスクが下がるそうです。しかし、すい臓がんに関しては下がらない。

このことに関して、最後の質問コーナーで、「どうしてリスクが下がらないのか」といった質問がありました。この話をしたのは疫学の専門家です。疫学とは分かりやすく言えば統計。つまり、疫学の人が「喫煙をやめてもリスクが下がらない」と言ったのなら、それは「喫煙者と、禁煙した人を調査したら、すい臓がんの罹患率(すい臓がんになった人の割合)が同程度だった」という意味です。

質問に答えた専門家は「理由を聞いているなら、分かりません、ということになる。(調査結果から)そういう結果が読み取れるということ」と答えていました。

上記の質問をした人は、おそらく疫学が何かを知らないのでしょう。知っていたらこんな質問はしません。そして、その答えにおそらく失望したのではないでしょうか。専門家なのにわからないなんて、無責任な人だ、と思ったかもしれません。疫学の立場から「分かりません」との答えは真摯な正しい態度なのですが。

何が言いたいかというと、こういった単純な誤解をしないために、癌のことを学びたい人は、よくよく気をつけて、いろいろなことを勉強しなければならないということ。私自身、たまたま一ヶ月ほど前に別の講座を聞くまでは、疫学という言葉を知りませんでした。

そして、情報を提供する側も、すでに色々配慮してはいるでしょうが、重ねて、わかりやすい情報発信をお願いしたいと思います。今回の講座にしても、難しい用語の解説や誤解したすいグラフの読み方の注意などがあるといいと思いました。

タグ:すい臓がん
posted by まーさん at 19:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 癌とピアサポーター
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